コラム

『四〇〇万企業が哭いている ドキュメント検察が会社を踏み潰した日』

2012年9月16日 | 読書

400万の中小企業の7割が粉飾決算をしている!?

おいおい、そんなこと言っていいのかよ!?
と思って本書を購入してみました。

でも、どう調べたらこういうデータが出たのか根拠が明確にされていませんでした。
ほとんどすべての会計事務所が、粉飾決算の協力しているかのようなくだりを見つけるたびに「一緒にしないでもらえないだろうか!」という税理士が7万人ぐらいいるはずだ!と思ってしましました。

この本に書かれていることに大きな間違えがあるとは思いません。
銀行員が巨額のノルマを背負っていることはしばしば耳にしました。「ビジネスローン」全盛時代はよく聞きましたが最近はあまり聞きません。
銀行融資を頼りに事業継続している会社が多数あった時期は確かにありました。
経営者の多くが銀行の顔色をうかがって神経質になっているのは事実でしょう。

確かに、保証協会付でなければ銀行から融資を受けにくい現実はあります。
赤字の会社でも、債務超過の会社でも、条件とタイミングさえ合えば融資が実行されていました。粉飾は必須ではありません。粉飾すれば借りやすいのも事実でしょう。でも、中小企業のほとんどが粉飾することで生き延びているということには同意できません。
どの会社も必死に生き延びるための努力をされています。粉飾以外の手段で。

本書の事件が地検特捜部の取り上げるべき事件であったかは疑問ではあります。
自動車のスピード違反を特捜部が刑事告発しているようなものだ、といった部分には「確かに」と思いましたね。
特捜部とはそういうところなのか、公権力とはかくも恐ろしいところなのかと考えながら読み進めました。公権力がどのような論理で捜査と証拠固めをしてしまうのか、裁判がどのようなものなのかはある程度予想できるところではありました。彼らは「世間知らず」なためこんなことが起こってしまう、というのも一部うなづけるところでもあります。

こうした崖っぷちは誰もが気が付かないうちに通り過ぎているものなのだと思います。
誰もがいつ崖っぷちに躓いて谷底を見るかもしれないということを認識しておくべきでしょう。

これぐらいはどの会社でもやっていることだ!

そう思うのは自由ですけど、意外とそんなことはないかもしれません。

税の世界でも同じです。

強制調査権を持った調査官が令状片手に突然訪問してくるかわからないのです。

ネットで報道される脱税事件の規模をご覧になればよくわかるはずです。

『悪の会計学 キレイごと一切なしの裏会計入門』

2012年6月12日 | 読書

またまた、元国税調査官の大村大次郎さんの本です。

『裏会計』って、なんて刺激的なんでしょう(笑)
この手の本、嫌いじゃないんです。というか好きです(汗)
以前は別冊宝島とかが好物でした(爆)

残念ながら、目新しいことはありませんでした。
まぁ、自分の専門分野ですから当然といえば当然。
勘違いしないでください。悪の税理士をしているわけではありませんからね。

本のタイトルは刺激的なのですが、基本的なことが解説されています。
税務会計の抜け穴はこんなところにあるんですよ!という素人向けノウハウ本です。

『「いいわけのできない作りごと」はしてはならない』

適確な示唆です。

形式が整っていれば何でもOKということはありません。
最低限でも「いいわけのできる」ことをしなさいということにも読めるのですが、嘘のエビデンスなんか揃えてもダメですよ!というご指摘です。ごもっとも。

例によって、素人向けのノウハウ本だということに注意しなければなりません。

本書に記載されていることで節税できることはあるのですが、要件と実態が伴っていることが絶対条件となります。その絶対条件が正確に解説されていないんです。ということで、そのまま実施すると事故になるものがたくさん記載されていますので、くれぐれもご注意くださいね。顧問税理士にうちの会社でもこういうことはできないの?と質問するのはありです。

『高田直芳の実践会計講座 「戦略会計」入門』

2012年6月5日 | 管理会計 / 読書

高田先生の本のご紹介です。
前回の『「管理会計」入門』に軽いショックを受け興味を持ったのがきっかけでした。

どうやら本格的に「ありそうでなかった」高田ワールドの扉を開いてしまったようです。
高田先生の著書のタイトルは、「どこにでもありそう」な「管理会計」「戦略会計」ですが
中身は従来の理論教本とは全く違うのです。

本書は、経済学の理論を本気で実務に応用しようとしています。
この、高田先生の「本気」は今までありそうでなかったものでした。
というのも、従来、経済学と会計学は別物として議論されてきたと思います。
しかし、高田ワールドでは、
経済学⇒会計学
会計学⇒経済学
というように、相互検証を行い両者の同一性を検討しています。

市場の動静を経済学的に整理し、各段階で検討すべき経営戦略の方向性を示す。的確な経営情報を収集・活用するための道具として管理会計(戦略会計)を位置づけています。

これを踏まえて経済学の会計学への応用可能性、さらには経営学への応用可能性を検討しているのです。全く新しい試みだと思います。

経済学の均衡理論や独占的競争市場において発生する現象を実際の企業経営にどのように応用するか。企業のおかれたポジションを分析することで、どのような経営戦略を選択すべきなのかなどが検討されています。

ただ、ミクロ経済学では、情報の完全性があるものとして理論化されているわけですが、実社会はそうはいきません。市場規模にしても、市場の成熟度にしても客観的確実な数値を手にすることは困難です。
実務化するためには企業ごとに何らかの仮説を想定し、検証していく作業が不可欠となります。万が一ミスマッチした場合、経営の失敗につながる予感もします。しかし、情報が不完全な実社会であっても、こうした試行錯誤を繰り返す努力をしている企業と直感に頼った経営をしている企業とではいずれ大きな差となって現れることでしょう。

本書を読解するには、会計の基礎知識とCVP分析に関する基礎知識に加え、ミクロ経済学の知識がある程度必要かもしれません。
本書で展開される理論は公認会計士試験の試験科目でほぼ網羅されるものなので、自分としては懐かしい知識ともいえました。しかし、実務で経済学を使うことはあまりないように思いますから、とっつきにくい方もおられるかもしれません。受験レベルで理解する必要があるものではありませんから、気楽に読む姿勢でよいと思います。

著者の高田先生とは何者よ?と思って調べてみると、公認会計士試験の試験委員をされているのですね。受験生にとってはきついかもしれませんね。でも、実務では役に立つ知識が満載ともいえますから頑張ってもらいたいです。




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上原将人(上原公認会計士事務所) × 阿部淳也(1PAC. INC.)

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