コラム

所得税の予定納税と予定納税額の減額申請

2012年6月13日 | 税金の基礎知識

予定納税の通知が来ます

今週15日に平成24年分所得税の予定納税の通知書が税務署から発信されます。
予定納税の対象者は、平成23年分の所得税確定申告で予定納税基準額が15万円以上であった方です。

予定納税基準額 ≧ 15万円  ⇒ 予定納税通知が来る人

予定納税基準額 = 調整後所得税額 - 源泉徴収税額

所得税の第3期納付で多額の納税を行う人については、翌年分の所得税の前払いとして予定納税をしてください、ということです。

調整後所得税額とはなにか

調整後所得税額がいくらなのかがわからないと予定納税基準額はわかりませんよね。

調整後所得税額とは、譲渡所得、一時所得、雑所得、雑所得に該当しない臨時所得などがなかったものとして計算した課税総所得に対する所得税額のことです。

要するに、前年に事業所得や給与所得などで多額の所得税が発生し、第3期納付(所得税の確定申告)で追加納税が必要となってしまったケースが考えられます。
不動産や株式の譲渡によって確定申告時に納税が発生した場合は対象とならないことになります。

事業所得
  • 源泉徴収を受けていない事業で前年に多額の所得が発生した場合
  • 源泉所得税をされていても確定申告で多額の追加納税をした場合(医師や弁護士など)
給与所得
  • 多額の非適格ストックオプションの行使をした場合
  • RSU(制限付株式)の権利確定があった場合
  • その他、多額のボーナスを受けたなどで月額給与に対する源泉徴収では年税額として不足した場合

予定納税額

予定納税の通知書が送られてきた人は、通知書に記載されている金額を期日までに納税する必要があります。
納税額は、

予定納税額 納期限
予定納税基準額 × 1/3 第一期(7月1日から7月31日まで)
予定納税基準額 × 1/3 第二期(11月1日から11月30日まで)

その年では、前年のような臨時収入はないから、予定納税をしても確定申告の際にどうせ還付されるだけだから納税しないでいい!?とお考えではありませんか?
ところがそうはいかないのです。
予定納税の対象者は、上記納期限に納付する義務が法律上発生しているので、仮に翌年3月に所得税の還付申告を行うことになるとしても納税が必要になるのです。

予定納税の減額申請を検討しましょう

確定申告すれば確実に還付になるはずなのに多額の予定納税しなければならないのは厳しい!!という方もおられることでしょう。

こんなときは予定納税の減額申請を検討してみてください。

次のような条件に該当する場合には、予定納税を減額してもらえることがあります。

予定納税基準日 申請期限 条件
第一期 6月末日 7月1日から7月15日まで
    1.  基準日の現況でその年の申告納税額の見積額が予定納税基準額の70%以下になると認められる場合

 

  1.  基準日までに事業廃止・休止、失業などにより申告納税見積額が予定納税基準額に満たなくなると認められる場合
第二期 10月末日 11月1日から11月15日まで

減額申請の期限は絶対厳守ですから、適用が可能な方は期日までに減額申請を所轄税務署に提出することをお勧めします。減額申請書は国税庁HPから入手できます。
なお、第一期で第二期分も同時に減額申請することができます。

クレジットカードでも領収書を必ずもらう

2012年6月11日 | 税金の基礎知識

カード精算書では不十分

カード会社が発行するクレジット利用明細を経費の根拠書類としていませんか?
クレジットカード利用明細には、いつ、どこの店で、いくら使ったかが一覧記載されています。経費精算には便利なのでこれを利用している方もおられるのではないかと思います。

要するにカード精算書を領収書の代わりにしているということですね。

さて、便利に思われるカード精算書は本当に領収書(請求書)の代わりになるのでしょうか?

国税庁のHPでは領収書の代わりにはならないと書いてあります

カード会社からの請求明細書(国税庁HP)
【照会要旨】
法人カードを利用している場合には、カード会社から一定期間ごとに請求明細書が交付されますが、この請求明細書は消費税法第30条第9項《仕入税額控除に係る請求書等の記載事項》に規定する請求書等に該当するのでしょうか。
【回答要旨】
クレジットカード会社がそのカードの利用者に交付する請求明細書等は、そのカード利用者である事業者に対して課税資産の譲渡等を行った他の事業者が作成・交付した書類ではありませんから、消費税法第30条第9項に規定する請求書等には該当しません。(以下省略)

そこで、消費税法30条は何か書かれているかというと、

消費税法第30条
9 第7項に規定する請求書等とは、次に掲げる書類をいう、
一 事業者に対し課税資産の譲渡等を行う他の事業者が、当該課税資産の譲渡等につき当該事業者に交付する請求書、納品書その他これらに類する書類で次に掲げる事項が記載されているもの
イ 書類の作成者の氏名又は名称
ロ 課税資産の譲渡等を行った年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に行った課税資産の譲渡等につきまとめて当該書類を作成する場合には、当該一定の期間)
ハ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
ニ 課税資産の譲渡等の対価の額(当該課税資産の譲渡等に係る消費税額及び地方消費税額に相当する額がある場合には、当該相当する額を含む。)
ホ 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称

消費税法30条9項の要件を満たす書類を保存していないと、その取引について仕入税額控除を適用できないことになるわけです。上記国税庁HPのQ&Aは消費税法の話で法人税法についての話ではありません。

カード会社から発行される明細書は、

  1. 利用したお店が発行したものではない
  2.  カード利用の内容が明記されていない

という点で要件不足という訳です。
超形式的な対応で、がっくりさせられますけど、法律に書いてあるのでそうするしかないようです。

結局、消費税の仕入控除の対象とするには、カード精算書ではなく、お店の領収書もしくは店舗で交付されるカード利用明細を保管しておかなければならないことになります。
税務調査でこんな細かいところまでチェックされないかもしれませんが、指摘される可能瀬もあるのでご注意ください。

上記の点は、消費税の免税事業者や簡易課税を選択している会社には関係ありませんので誤解のないよう。

法人税法の方も気になりますが、法人税法には書類の発行要件のようなものまで記載されていないようです。
以前税務調査で、カード精算書は領収書に該当しないから損金算入は認められない!と指摘されたこともありました。そのときは何とか収まりましたけど、店舗が発行した領収書もしくはカード利用明細を会社保管しておいた方がよいでしょうね。

ホームページ制作費は単年度の費用にならないのか?

2012年5月30日 | 税金の基礎知識

国税庁が変なQ&Aを出している

中小企業が自社ホームページを作成するのは当たり前な時代になりました。
その制作費は無料のもの(無料ブログなど)から、数百万円に及ぶものまでかなりの幅があります。

いまや中小企業にとって必須のものとなったホームページの制作費用について国税庁は次のような指針を出しています。

【ホームページの制作費用について】
通常、ホームページは企業や新製品のPRのために制作されるものであり、その内容は頻繁に更新されるため、開設の際の制作費用支出の効果が1年以上には及ばないと考えられますので、ホームページの制作費用は、原則として、その支出時の損金として取り扱うのが相当であると考えられます。
ただし、ホームページの内容が更新されないまま使用期間が1年を超える場合には、その制作費用はその使用期間に応じて償却します。
また、制作費用の中にプログラムの作成費用(ソフトウェアの開発費用)が含まれるようなホームページについては、その制作費用のうちプログラムの作成費用に相当する金額は無形減価償却資産(ソフトウェア)として耐用年数「5年」を適用して償却することとなります。

 

ポイント:

  1. 原則として、支出時の費用にしてよい
  2. 1年以上更新しないまま使用する場合には使用期間に応じて償却する
  3. 制作費のうちプログラムに該当する部分は5年で償却する

この取扱い、みなさんの感覚に合いますか?

原則部分は当然のことだと思います。

ただし、国税庁の論拠は、『頻繁に更新するもの』だから、支出時に一括して費用処理して構わないというものです。

コーポレートサイトをそんなに頻繁に更新するものでしょうか?

WordPressのような無料のブログツールを基礎とするものの独自のデザインを施した場合、そのデザインは頻繁に変更されるものでしょうか?

これらの制作費用はカットオーバー時の費用にできない!?というのでしょうか??

HPで頻繁に更新されるのはコンテンツであって骨組みではない

個人的には国税庁の上記見解には全く納得がいきません。
WEBの世界で頻繁に更新されるのは、コンテンツ(テキスト)であって、htmlの基本構造やデザインではありません。WEBサイトの基本構造であるディレクトリ定義やCMS、テンプレートをしょっちゅう変更するサイトがどれほどあるのでしょうか!?そんなことしたらとてつもないコストがかかってしまいます。テキストの書き換えを頻繁にしたら検索エンジンのキャッシュを自ら破壊しているようなものです。デザインを頻繁に更新したら、ユーザーロイヤルティを下げてしまう可能性もあります。現実的ではありません。

通常のWebSiteは、これらの基本構造とデザインを利用して、コンテンツとしてのテキストを書き換えたり、ブログツールで累積していくものです。これらの更新は、表面的には更新に見えるかもしれませんけど、立ち上げ時に作り上げた基本構造は変化していません。

国税庁の言い分に従うのであれば、ほとんどのWebSiteは一時の損金にできないことになるはずです。

国税庁のホンネは、基本的には一括費用処理していいけど、HP制作費という名目であれば何でも落としていいよとはいえないんだよね。。。というところではないでしょうかね。私見ですよ。

問題なのは大規模なECサイトなど

データベースからの読み出しを行うものは、ソフトウェアに該当するといった解説がネットに多数あります。

データベースからの読み出し機能を搭載したら何でもまずいのでしょうか?
WordPressを利用したWebSiteが非常に多くなっていますけど、WordPressはMYSQLというデータベースにコンテンツを格納し、必要に応じてこれを読み出す仕組みです。
WordPressを使ったらアウト!なんてことはないはずです。

国税庁が一括損金算入させたくないのは、Yahoo!やカカクコム、mixiなど、独自に高度なアプリケーション(独自のCMSなど)開発を行いWEBビジネスを展開しているところと考えてよいのではないでしょうか。

また、WebショップなどのECサイトはお店そのものですので、それ相当の費用を投下してサイトを構築しています。

これらの会社の中には年間何億円もかけてサイト構築しているところもあるはずです。それこそ頻繁にサイト更新を行っています。
これらのビジネスに対するロジックとして、冒頭の国税庁の考え方は脆弱すぎるのではないかと思います。ただし、法人税法では、効果の支出が長期に及ぶものは繰延資産として処理すべしという定めがありますので、これを適用されると反論しにくくなるのではありますが。

結局のところ、大規模サイトを運営している場合を除き、

当初制作費が、300万円を超えるなど一般的な相場を大幅に上回るケースや会社の規模に比較して多額な場合、明らかに利益つぶしを狙って制作費を計上した懸念がある場合を除けば、問題にならないと思います。

これらの場合は、ホームページだからどうこうの問題ではなく、他の名目でも同様に議論に対象になりやすいものですよね。ソフトウェアは組み込んでいないから一括損金算入できると決め付けるのではなく、顧問税理士とよく相談した方がよいと思います。

ちなみに、僕もこのHPの制作費を一括経費処理しています。
税務調査で確認をされましたが、何の議論もなく一括費用処理で通りました(笑)




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上原将人(上原公認会計士事務所) × 阿部淳也(1PAC. INC.)

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