コラム

ホームページ制作費は単年度の費用にならないのか?

2012年5月30日 | 税金の基礎知識

国税庁が変なQ&Aを出している

中小企業が自社ホームページを作成するのは当たり前な時代になりました。
その制作費は無料のもの(無料ブログなど)から、数百万円に及ぶものまでかなりの幅があります。

いまや中小企業にとって必須のものとなったホームページの制作費用について国税庁は次のような指針を出しています。

【ホームページの制作費用について】
通常、ホームページは企業や新製品のPRのために制作されるものであり、その内容は頻繁に更新されるため、開設の際の制作費用支出の効果が1年以上には及ばないと考えられますので、ホームページの制作費用は、原則として、その支出時の損金として取り扱うのが相当であると考えられます。
ただし、ホームページの内容が更新されないまま使用期間が1年を超える場合には、その制作費用はその使用期間に応じて償却します。
また、制作費用の中にプログラムの作成費用(ソフトウェアの開発費用)が含まれるようなホームページについては、その制作費用のうちプログラムの作成費用に相当する金額は無形減価償却資産(ソフトウェア)として耐用年数「5年」を適用して償却することとなります。

 

ポイント:

  1. 原則として、支出時の費用にしてよい
  2. 1年以上更新しないまま使用する場合には使用期間に応じて償却する
  3. 制作費のうちプログラムに該当する部分は5年で償却する

この取扱い、みなさんの感覚に合いますか?

原則部分は当然のことだと思います。

ただし、国税庁の論拠は、『頻繁に更新するもの』だから、支出時に一括して費用処理して構わないというものです。

コーポレートサイトをそんなに頻繁に更新するものでしょうか?

WordPressのような無料のブログツールを基礎とするものの独自のデザインを施した場合、そのデザインは頻繁に変更されるものでしょうか?

これらの制作費用はカットオーバー時の費用にできない!?というのでしょうか??

HPで頻繁に更新されるのはコンテンツであって骨組みではない

個人的には国税庁の上記見解には全く納得がいきません。
WEBの世界で頻繁に更新されるのは、コンテンツ(テキスト)であって、htmlの基本構造やデザインではありません。WEBサイトの基本構造であるディレクトリ定義やCMS、テンプレートをしょっちゅう変更するサイトがどれほどあるのでしょうか!?そんなことしたらとてつもないコストがかかってしまいます。テキストの書き換えを頻繁にしたら検索エンジンのキャッシュを自ら破壊しているようなものです。デザインを頻繁に更新したら、ユーザーロイヤルティを下げてしまう可能性もあります。現実的ではありません。

通常のWebSiteは、これらの基本構造とデザインを利用して、コンテンツとしてのテキストを書き換えたり、ブログツールで累積していくものです。これらの更新は、表面的には更新に見えるかもしれませんけど、立ち上げ時に作り上げた基本構造は変化していません。

国税庁の言い分に従うのであれば、ほとんどのWebSiteは一時の損金にできないことになるはずです。

国税庁のホンネは、基本的には一括費用処理していいけど、HP制作費という名目であれば何でも落としていいよとはいえないんだよね。。。というところではないでしょうかね。私見ですよ。

問題なのは大規模なECサイトなど

データベースからの読み出しを行うものは、ソフトウェアに該当するといった解説がネットに多数あります。

データベースからの読み出し機能を搭載したら何でもまずいのでしょうか?
WordPressを利用したWebSiteが非常に多くなっていますけど、WordPressはMYSQLというデータベースにコンテンツを格納し、必要に応じてこれを読み出す仕組みです。
WordPressを使ったらアウト!なんてことはないはずです。

国税庁が一括損金算入させたくないのは、Yahoo!やカカクコム、mixiなど、独自に高度なアプリケーション(独自のCMSなど)開発を行いWEBビジネスを展開しているところと考えてよいのではないでしょうか。

また、WebショップなどのECサイトはお店そのものですので、それ相当の費用を投下してサイトを構築しています。

これらの会社の中には年間何億円もかけてサイト構築しているところもあるはずです。それこそ頻繁にサイト更新を行っています。
これらのビジネスに対するロジックとして、冒頭の国税庁の考え方は脆弱すぎるのではないかと思います。ただし、法人税法では、効果の支出が長期に及ぶものは繰延資産として処理すべしという定めがありますので、これを適用されると反論しにくくなるのではありますが。

結局のところ、大規模サイトを運営している場合を除き、

当初制作費が、300万円を超えるなど一般的な相場を大幅に上回るケースや会社の規模に比較して多額な場合、明らかに利益つぶしを狙って制作費を計上した懸念がある場合を除けば、問題にならないと思います。

これらの場合は、ホームページだからどうこうの問題ではなく、他の名目でも同様に議論に対象になりやすいものですよね。ソフトウェアは組み込んでいないから一括損金算入できると決め付けるのではなく、顧問税理士とよく相談した方がよいと思います。

ちなみに、僕もこのHPの制作費を一括経費処理しています。
税務調査で確認をされましたが、何の議論もなく一括費用処理で通りました(笑)





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