コラム

事前確定届出給与と役員給与の損金算入の可否

2010年5月19日 | 税金の基礎知識

役員報酬の取り扱いに事前確定届出給与というものがあります。これも役員報酬が損金算入できる場合とできない場合が微妙に入り組んでしまうので整理しておきます。

事前確定届出給与とは

前回は役員報酬を損金算入できる場合のひとつとして定期同額給与というものをご説明しました。

今回は役員報酬の損金算入が認められる第二のケースである事前確定届出給与について整理してみます。
事前確定届出給与とは、その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与(定期同額給与及び利益連動給与を除く)で、一定の届出期限までに所定の事項を記載した書類を納税地の所轄税務署長に届出をしている給与を言います。

定期同額給与は、1ヶ月以内の期間ごとに支給される給与でその事業年度の各支給期間の支給額が同額であるものでした。すなわち、定期同額給与は毎月支払われる役員給与でなければなりません。ところが、実務上は、非常勤監査役や会計参与のように年間を通じて執務しなくてもよい役員も存在しており、これらの者に対して毎月の支給が行われていないから損金不算入だというのは現実的ではありません。従来から、非常勤役員について年に1度まとめて報酬を支給するような実務が存在していました。こうした背景からたとえ年に1度の支給であったとしても、その報酬が予め決定しているのであれば、利益調整に利用されることもないであろうから、税務署に事前に届出をすることを条件に損金算入を認めるというのが事前確定届出給与なのです。

事前確定届出給与は税務署に届出が必要

役員報酬が単に社内的に確定しているというだけでは、確定した役員報酬とは認めないというのが課税庁の考えです。
事前に、いつ、いくらを、誰に支給するかを税務署に届出していなければ、事前確定届出給与とは認められないことになっています。
そして、「事前に」という条件に関しても具体的な期限が定められており、次の日のうちいずれか早い日が届出期限とされています。

株主総会等の決議により役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨を定めた場合における、その決議をした日から1ヶ月を経過する日。ただし、その決議の日が職務執行開始日後である場合には、その職務執行開始日。
その事業年度の開始日から4ヶ月を経過する日

新設法人の場合と臨時改定事由が生じた場合には別途期限が定められています。また、一度届出た内容を変更できる場合と届出期限が定められていますのでご留意ください。

損金算入可否のケーススタディ

事前確定届出給与制度も実務上損金算入が認められるケースと微妙な違いで損金不算入となってしまうケースがあります。取扱要注意の制度なのでケーススタディを列挙しておきます。例によって気持ち悪くなりますのでご注意ください。

  1. 完全一致支給
  2. 支給金額、支給時期ともに届出内容と完全一致している場合には問題なく支給額は損金算入が認められます。

  3. 不完全一致支給(一部支給)
  4. 届出額よりも1円でも少なく支給した場合には支給金額の全額が損金不算入となってしまいます。支給時期がと届出と一致していない場合も支給額が完全一致していても損金不算入となりますので注意が必要です。

  5. 不完全一致支給(不支給)
  6. 届出を行っていたが実際には支給を行わなかった場合、本来は損金不算入なのですが、不算入とする対象額がないので結果的に不算入額はゼロとなります。なお、利益操作目的の届出や不支給は問題になる可能性がありますので注意しましょう。

  7. 不完全一致支給(超過支給)
  8. 届出額を超過して支給した場合、支給額の全額が損金不算入となります。届出額までは損金算入が認められるべきとお考えになるかもしれませんが認められないことになっています。

  9. 定期同額給与と事前確定届出の重複
  10. 定期同額給与の損金算入と事前確定届出給与の損金算入を重複して適用できるのかという問題ですが、両者は別枠の制度とされているため、重複が認められます。よって、完全一致支給である限り全額の損金算入が認められます。なお、事前確定届出給与が不完全一致支給であったとしても定期同額給与の損金算入の可否に影響は及びません。

  11. 複数回支給の場合の不完全支給(一部金額相違)
  12. 事前確定届出給与を複数回支給するものとして届出た場合の問題です。すべての支給を完全一致で支給するのであれば問題なく全額が損金算入となりますが、いずれかの支給もしくは全部の支給に不完全一致が発生した場合にはその年度の事前確定届出給与のすべてが損金不算入となります。事前確定届出給与は年度単位の職務に対応して確定されていると考えているためです。

  13. 複数回支給の場合の不完全支給(一部不支給)
  14. 複数回支給ですべてその事業年度中に支給されるケースです。そして、そのいずれかに不支給があった場合、他の支給が仮に完全一致支給であったとしても全額が損金不算入とされます。事前確定届出給与は年度単位の職務に対応して確定されていると考えているためです。

    この場合も上記と同様一度の不完全支給が他の完全一致支給に影響を与え損金不算入ということになります。

  15. 事業年度をまたいで不完全一致支給(その1)
  16. 届出た支給時期が翌年度にまたがることがあります。複数回支給の届出を行っており、1回目は事業年度中に届出どおりに支給したが、2回目が翌事業年度の支給になっている場合です。この場合はその事業年度中に届出通りに支給された部分は全額損金算入が認められます。翌期に支給された不完全一致支給は翌年度の所得計算上損金不算入となります。

  17. 事業年度をまたいで不完全一致支給(その2)
  18. 上記の逆のパターンです。1回目は不完全一致支給になってしまったが、翌期の2回目は完全一致支給になっている場合です。この場合、1回目だけではなく2回目の支給も損金不算入となります。事前確定届出給与は執行年度単位で確定していることが前提であるため、1回目の不一致が2回目に影響することになります。

  19. 届出外給与の混在(同族会社の場合)
  20. 事前確定届出のほかに届出を行っていない支給(決算賞与など)が支給されることがあります。事前確定届出給与は届出単位で完全一致が判定されるため、届出外の支給があっても影響を及ぼしません。同族会社の場合には届出外の支給のみが損金不算入となります。

  21. 届出外給与の混在(同族会社以外の場合)
  22. 上記のケースとの違いは、同族会社に該当するかどうかです。同族会社以外の会社である場合には、届出外支給を行ったとしてもその支給は損金不算入とはしないこととされています。





このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録

免責

本記事の内容は投稿時点での税法、会計基準、会社法その他の法令に基づき記載しています。また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行うか、十分に内容を検討の上実行してください。当事務所との協議により実施した場合を除き、本情報の利用により損害が発生することがあっても、当事務所は一切責任を負いかねます。




無料相談のお申し込み

起業・経営に関することなど、お気軽にご相談ください。

対談:独立開業ものがたり

上原将人(上原公認会計士事務所) × 阿部淳也(1PAC. INC.)

コラム

あなたの悩み解決を手助け。
上原公認会計士事務所所長の上原将人によるコラム。

お客様の声

お客様から頂いた声を事例としてご覧ください。