コラム

収支計画の作り方

2009年8月20日 | 起業支援

起業するならまず計画を

事業の収支を家計の感覚で行うと大変なことになります。自らのプランを達成できるか検討しなければなりません。立派な事業計画である必要は必ずしもありませんが、売上の見込みと経費の見込みをまずはシミュレーションしてみないと始まりません。今回は初歩的な収支計画の作成を具体的に考えてみましょう。

今回は簡単なEXCELシートを用意しましたのでご自由にダウンロードしてください。
もちろん無料です。

ダウンロード

売上計画を作る

売上は会社の最大の資金調達源です。その精度いかんで経費支払原資の確保ができるかどうかが決まってしまいます。
売上計画は、商品・サービスと販売チャネルを組み合わせて、どのようにすれば売上が実現できるかを検討する必要があります。これまでの実績や人脈から具体的に販売先がある程度見えているケースもあれば、販売サイトを立ち上げる場合のように全くゼロから作りこまなければならないこともありえます。このように販売実現のための基礎条件を整理し、それぞれに対してどのような行動(コスト)が必要かを整理していく必要があります。
「独立したら仕事を出すからね!」という応援があるかもしれません。しかし、その言葉の実現可能性を客観的に評価していかなければなりません。甘い見込みは禁物です。

原価の見積り

売上に対する原価を計算する必要があります。物販であれば仕入れ条件をある程度見込むことができるでしょうから、平均的な原価率(仕入原価÷売上)を計算することができます。
これに対してサービスの場合にはそう簡単ではありません。サービスの源泉が、人である場合もあるしコンピュータシステムのこともあるでしょう。これらは一定期間に一定の固定費として費用が発生するものです。
売上原価の特性にあわせて原価額を見積もる必要があります。

人件費の見込みを計算する

人件費としては、役員報酬と従業員給与、アルバイトなどの雑給、社会保険、通勤費が考えられます。役員報酬はここでは計算せず、その他の人件費を計算します。
従業員に関して具体的な人が判明している場合には人別に、判明していない場合には想定月給と必要人数から計算します。社会保険料はアルバイト分も含め給与の13%を見込んでおきます。
当初から大勢の人員を抱えることはリスクが高いので最小限のメンバーとし、売上の状況を見極めながら増員する計画とすべきでしょう。実際には起業したての会社が一般求人人材確保するのはかなり難しいので、初期立上メンバーだけで計画することが多いと思います。

家賃などの固定費を見込む

オフィス家賃や通信費などの事業インフラの費用を見込みます。家賃は経費のうちで非常に大きな固定費となります。インターネットの不動産情報などを参考に目標エリアの賃料を検討します。よほど確実な売上見込がない限り最初から大きすぎるオフィスを準備するのは危険です。通常2年契約となりますし、定期借家契約のこともありますから、その後の賃料を変動させることは難しいからです。計画段階では目標エリアの相場観を見極め計画に織り込む程度にしておいた方がよいでしょう。また、自宅をオフィスにすることも考えられますが、賃料を経費処理する一方、ご自身に不動産所得が発生しますので注意が必要です。
その他の通信費や経常的な消耗品費は大まかな目安で構いませんので計画に織り込んでおきます。

立上時の初期費用を見込む

設立当初からオフィスを構える場合には、不動産仲介手数料や前家賃、敷金が必要になります。仲介手数料と前家賃はそれぞれ家賃の1ヵ月分程度を見込んでおく必要があるでしょう。また、敷金は経費になりませんが資金繰りには大きく影響しますので資金繰り欄で見込んでおく必要があります。オフィス用物件の場合は10ヵ月分賃料、居住兼用物件の場合は2~3ヵ月分賃料を目安に見込みます。
事業が安定していない段階で豪華な内装を行うことは極力避け、什器も必要最小限のものとすべきでしょう。お披露目等の広告費用については考え方が別れると思いますが慎重に検討する必要があります。

役員報酬をどれだけとれるかを検討する

ここまでの見込み額をワークシートに入力すれば年間の損益見込が計算されます。ただし、役員報酬は未入力の状態です。計算された利益相当額までは役員報酬を収受しても収支が合わせられるということになります。実際には役員の生活に必要な額に達していないこともあると思います。このような場合には売上計画その他の経費見込みを再度検討しなおす必要があります。ただし、目標役員報酬が確保できる売上計画を作成したり、経費を過小に見込むことは避けなければなりません。
どのようにすれば目標の売上が達成されるのか、どうすれば必要役員報酬を捻出できるのかを何回も検討する必要があります。

資本金として投入できる金額を見込む

資本金が大きければ大きいほど会社の資金繰りは楽になりますが、あくまでも会社に対する投資です。必要に応じて増資することもできるし、不足資金を会社への貸付により解消することもできます。資本金でなければならない訳ではありません。
事業内容によって一概に言えないことですが、販管費と売上原価の2ヵ月分+初期投資費用(敷金など)を合計した額を資本金の目安にすることができると思います。

経営者の生活が耐えられるか検討する

法律上は会社と経営者は別個の法人格と言うことになっていますが、中小企業においては実態的に一致していると考えてほぼ間違いありません。会社の資金繰りが厳しいときには、経営者が会社に貸し付けるなどして資金注入しなければならないこともありえます。このような事態に備えて、資本金以外にある程度の資金が経営者の手元にあることが望ましいと言えます。資金繰り面でギリギリの計画は厳に避けなければなりません。
経営者の生活と会社の資金繰りを考慮して、安定的な生活ができるかを収支計画の中で検討しておく必要があります。

金融機関からの融資は当てにしない

起業したての会社や個人に対して日本政策金融公庫などの公的金融機関が創業支援融資制度を用意しています。起業時には是非検討しなければならないテーマではありますが、あまり期待しすぎないようにすべきでしょう。ベンチャーキャピタルのように事業計画に投資するというよりも、確実な回収を前提に行われる融資なので当然のことです。「計画上、これだけ資金が足りないから融資をお願いしたい」というだけでは融資実行はされないと思っていた方がよいです。事業内容や経営者の過去の経歴を審査して、300万円~1,000万円の範囲でのみ調達可能と見ておいたほうがよろしいでしょう。

3つのケースを見込む

上記シミュレーションは3パターン作成するようにしてください。
ベストケースは、全ての計画を順調に進めることができ、最大限の目標利益を達成できた場合のシミュレーションです。ワーストケースは、計画が最悪の進捗をした場合のシミュレーションです。もうひとつはその中間点としてどの程度が現実的に達成可能かをシミュレーションしたものと言うことになります。
資本金はミドルレベルのシミュレーションに合わせて設定しておくべきでしょう。ベストケースとワーストケースをあわせてシミュレーションしておくのは、いずれのケースでも多額の資金が必要になるはずで、それがどの程度なのかを確認しておく必要があるからです。ワーストケースの場合には事業撤退もしくは経営者による追加資金注入が必要となる可能性が高く、ベストケースの場合でも第三者からの資金注入を検討する必要がありますがその可能性について考えておく必要があるということです。

見込みは極力保守的に行う

申込みをすれば金融機関がお金を貸してくれるという現実はないと考えておくべきです。資金ショートを起しては何のためにリスクを背負って起業するのかわかりません。資金繰りには常に慎重でなければなりません。
この意味で、計画は保守的に作成しなければなりません。売上計画を希望的観測で作成したり、経費を甘く見積もるのも問題です。売上は固めに、経費は多めに見積もった状態で収支が合う計画でなければなりません。起業時の計画は夢がたぶんに織り込まれやすいので客観的第三者に計画内容自体をみてもらい意見を求めておくことが望ましいでしょう。

資金が足りない場合には出資者を探す

計画段階で資金不足が懸念される場合には、出資者を別途探すことも検討しなければなりません。資金が厳しくなっている状態で出資依頼をしてもなかなか応じてもらえるものではありません。計画段階で如何に素晴らしい事業なのか、如何に実現可能な計画なのかを説明して出資してもらえるように事前に調整すべきでしょう。ただし、経営の主導権がその第三者に移転しないよう資本政策的観点から経営陣は出資を検討しておく必要もあります。

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