コラム

決算月の決め方

2009年8月1日 | 起業支援

決算期の考え方には色々ある

定款には事業年度を記載しなければなりません。
要するに何月決算にするか?ということなのですが、悩まれる方が多いようです。

決算月の決め方に関しては色々な考え方があります。

上場会社では、かつては『総会屋対策をし易い』や『役所の予算年度と合わせる』という考えから3月決算にしているところが多くありました。

非上場の中小企業ではこのような考え方は参考にならないですね。

ここでは中小企業向けの実務的な決算月の考え方について整理してみます。

資金の動きに注目する考え方

決算月の設定に対してまず最初に注目しておきたいのが運転資金との関係です。
決算をすれば、法人税や住民税、消費税を納税しなければなりません。これらの納税は会社経営上ではかなり大きな資金の動きです。

法人税や住民税は、原則として、決算日から2ヶ月以内に納税する必要があります。
また、消費税も同様に決算日から2ヶ月以内に納税しなければなりません。

何月決算でも納税しなければならないことに変わりはありません。
しかし、他の大きな資金の動きとの対応関係を考えてみたらどうでしょうか。
会社の大きな資金の動きは納税の他に人件費と家賃があります。これらは通常は毎月ほぼ定額なので納税とはあまり関係ないのですが、人件費のうち賞与資金だけは別物です。

7月と12月に賞与を支給するのではないでしょうか。
賞与資金と納税資金を同時期に支払わなければならないとしたらどうでしょう。
特定の月に資金的負担がかなり偏ることは容易に想像できます。

7月-2ヶ月⇒4月・5月決算
12月-2ヶ月⇒9月・10月決算

賞与負担が大きい会社では、4月と5月、あるいは、9月と10月を決算月にすると賞与支払時期と納税時期がぶつかってしまうことがわかりますから、賞与支払額が大きくなる会社はこれらの月を決算月にすることは避けたほうがよいかもしれません。

在庫残高に注目する考え方

決算にあたっては、在庫の実地棚卸を行う必要があります。
特に小売業は在庫ボリュームが大きく、一斉棚卸は非常に手間がかかるものです。
場合によっては店舗を休業日にしたり、お店のお休みの日に休日出勤して棚卸を行うこともあります。

棚卸は決算のためだけに行うものではなく、棚差(いわゆるロス)の原因分析も棚卸後に行うべきです。

こうした作業はすべてコストとして跳ね返ってきますから、できれば在庫が少ない時期にまとめて行いたいと考えることもありえます。

アパレルなどの小売業が2月や8月に決算月を設定しているのは、シーズンが終了し、シーズン品をバーゲン処分(資金化)したタイミングに当てはまるからなのです。

在庫を大量に抱えるビジネスでは、棚卸にかかるコストを最適化するためには何月が望ましいのかということも考慮してみるべきでしょう。

営業政策に注目する考え方

営業の追い込み可能性が高い月に決算月を設定するという考え方です。典型的なのが住宅系建設業の会社が3月決算にしているケースです。
賃貸を含め住宅物件が大きく動くのは、やはり人事異動時期や入学卒業の時期です。一番需要が多いのは2-3月ということになります。

この時期に年間売上の50%以上を確保してしまうような会社もあります。逆に、この時期を除くと一気に需要が低迷し、いくら広告費を使っても結果になかなか結びつかないということでもあります。

ではなぜ、需要がピークになるタイミングを決算月とするのでしょうか。

これは極めて営業政策的な問題だといえるでしょう。

会社で決算月は特別な月です。
『全社をあげて今期予算達成!』という追い込みキャンペーンを経験した方も多いのではないでしょうか。追い込めば追い込むほど売上が増やせる環境だからこそ意味があるということですね。
また、営業ピークでの売上金は納税時期までに回収されるでしょうから、資金繰り的にも楽になるともいえます。

税金対策に注目する考え方

あえて営業のピークを外すという考え方です。
たとえば、3月が営業のピークだとするならば、1月に決算を切ってしまうということです。
このような決算の切り方をすると営業のピークが年度初めになる訳ですから、年度初めに計上された利益に対して計画的に節税対策を講じていくことが可能になります。
逆に営業のピークを期末に設定すると予想利益が大きくぶれる可能性があり、対策を打ち難くなるというも言えるのです。

また、新設法人に関して言うと消費税の免税メリットを最大限確保するという考えもあります。新規設立の会社は、資本金が1,000万円未満である場合、原則として第1期と第2期は消費税の免税事業者にすることができます。設立当初は特に税金負担が大きいものですから、2期分も消費税負担が軽くなるというのは非常に魅力的なことだと思います。免税メリットを最大限にするためには、会社設立の日を基準として第1期の月数をできるだけ12ヶ月に近づければ良いことになります。従って、この場合の決算月は設立日に従属する形で決定されることになります。

税理士が忙しいときは避けるべき?

税理士が忙しいと決算対策の検討に十分参加してもらえないから、3月決算や12月決算は避けた方がいいと聞くことがあります。3月決算は法人決算が多いから、12月決算は個人の確定申告時期とぶつかるからということなのでしょう。
確かにそれらの月は会計事務所の繁忙期ではあります。繁忙期だから決算対応の手を抜くとか、特別報酬加算をされるというのはどうでしょうか?
少なくともうちの事務所はそのようなことにならないように事前対応を心がけています。

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