コラム

オーナー経営型中小企業の機関設計

2009年8月11日 | 起業支援

オーナー型中小企業

典型的な同族会社では、社長が株式を100%所有していたり、社長とその親族が100%を所有していることが多いものです。所有と経営が完全に一致しているのがオーナー型中所企業の特徴です。別の言い方をすれば、所有と経営の「完全支配」となっていることがほとんどだと思います。「完全支配」という考えも当然あり得るのですが、財務体質が脆弱な起業したての会社では、税金のことも考慮しておく必要があるかもしれません。
これらのことを踏まえて、オーナー型中小企業の機関設計はどのようにしておくのが便利かをまとめてみます。

取締役会を設置しておく必要はあるか

所有と経営が完全一致しているのであれば、株主総会と取締役会を区別する必要性はそれほどないかもしれません。取締役が複数いる場合には、法律上それぞれが会社を代表して職務執行を行うことになっています。そのため、社長が了解していない事項を他の取締役が外部と約束してきた場合、その約束は会社として行った意思表示ということに法律上はなります。社長としてはこういう事態を避けたいのではないでしょうか?このような場合には、敢えて、取締役会設置会社とし、社長自らが代表取締役に就任することで、会社の対外責任の範囲を法律的に制限するのです。また、取締役会を設置しないと「代表取締役」を決定することができませんから、名刺上で「代表取締役社長」と表記していても厳密には「代表取締役」ではないことになります。
なお、取締役会設置会社にするためには、取締役を3名以上確保する必要があります。名義だけの取締役でも法律上構いませんが、その取締役には法律上の責任が生じることになりますので注意が必要です。

オーナー会社が注意したい特殊支配同族会社規制

特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度は、次の2つの条件が成立する場合に適用されます。
1. 特定の株主及びその近親者が発行済み株式の90%以上を所有すること
2. その特定の株主が同時に取締役で、本人及びその近親者の人数合計が常勤取締役の過半数以上を占めていること

この制度が適用されると、筆頭の取締役の給与の一部が税金の計算上、費用として認められないことがあります。意外と大きなインパクトになることがありますので注意が必要です。

特殊支配同族会社の役員給与損金不算入制度が適用される場合は、大雑把に言うと次のような場合です。

一番給与が高い役員(通常は社長)の給与(年)+会社の利益≧1,600万円

となる場合です。

このような場合には対策を検討しておく必要があるかもしれません。

取締役を何人おくか

もっともシンプルな機関パターンは、

株主総会 + 取締役(1名)

というものです。取締役会を設置しないのであれば、取締役は1名以上いればよく、社長一人でも何ら問題ありません。
ここで、上記の特殊支配同族云々のことを思い出してください。2つの適用要件が同時に成立した場合にのみ、この規制が発動されるものでした。

常勤取締役がもう一名いると第二の要件が成立しなくなるわけです。共同経営者や将来も一緒に経営に参画してもらえる従業員がいれば、その人に取締役就任してもらうことでよいのです。ただし、「常勤」でなければいけませんし、社長の近親者だと逆の結果になってしまいます。従業員を役員昇格させる場合でも、その従業員が退職してしまうと元の状態に戻ってしまいます。完全に社長の意思に従属的な従業員を役員にした場合、形式に過ぎないとして認められない場合もありえますので注意が必要です。

このような特殊支配同族会社規制を回避する必要があるのであれば、

株主総会 + 取締役(2名:常勤に限る)

という役員構成も有効と言えるでしょう。

資本要件を崩しておく

役員構成から特殊支配同族会社の要件を崩す方法の他に、資本要件から崩すことも考えられます。社長及びその近親者以外の人に10%以上の株式を保有してもらうことができれば要件は崩れることになります。事業上の提携関係にある会社と株式の持ち合いをするということもありえるわけです。あるいは、幹部従業員に株式取得の機会を与えるということもありえます。議決権株の2/3を社長が握っていれば、適切な手続さえ行えば、基本的に何でもできます。ただ、第三者を株主にするということは、その第三者に株主権(帳簿閲覧権など)が発生しますので注意も必要です。

バリバリオーナー経営者向けの機関設計

バリバリオーナー経営者向けの機関設計として次のパターンが考えられます。

株主総会 + 取締役(2名:常勤に限る)

この場合は、株式は100%社長が握っていて構いません。社長と利害が対立する少数株主がいないのであれば、株主総会から取締役会に権限を委譲しておく必要もないといえます。取締役の1名が退任した場合には法人税の規制を受ける可能性がありますので、その可能性がある場合には次のようなパターンにしておくことも有効です。

株主総会 + 取締役(3名:2名は常勤) + 取締役会 + 監査役(名目的)

少数株主がいる場合のようにいちいち株主総会を開催するのが手間だと言うときは、このタイプが有効です。商法時代からの典型的な株式会社の機関構成と同じですね。

特殊支配同族会社に関しては税務的に微妙な問題があります。ここでは初歩的な要件しか説明していませんので、必ず専門家に相談の上で決定してくださいね。

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