コラム

決算期変更と節税

2012年5月21日 | 税金の基礎知識

想定外に利益が出てしまった、どうしよう!?

大口の契約を獲得して納品を完了させた!

含み益のある固定資産を売却したら多額の売却益が発生した!

不返還条項付の前受金を収受する契約を締結したら税理士に一時の利益計上ですと指摘された!

この結果、多額に発生した利益(所得)を何とかしてつぶさないと法人税が大変なことになってしまう(汗)
だけど、決算までに日数も少なく十分な節税対策をすることができない(涙)

なんてことになったことはありませんか?

決算対策には金も時間もいる

節税対策しようにもお金を支出しなければならないものが多いし、節税のために固定資産を取得しても償却期間が限られているので効果が少ない、ということはよくあることです。

こんなときに考えてみたいのが『決算期変更』です。

たとえば、3月決算の会社が2月に不動産を売却する予定で、売却と同時に多額の売却益が発生することがわかっているのであれば、1月決算に変更してしまうということです。
この場合、3月までに決算をまとめて確定申告する必要がありますけど、売却益に対する法人税は翌年度の課税対象にすることができます。じっくり時間をかけて節税対策を検討することが可能になります。

決算期変更は意外と難しくない

決算期は定款記載事項ではありますが、登記事項ではありません。
定款は株主総会の決議(特別決議ですけど)を行うことで自由に変更することができます。多数の外部株主がいる会社でなければ比較的簡単に決算期を変更すことができます。

手続きとしては、

  1. 株主総会を開催し、定款の決算期の部分を変更する決議をする
  2. 議事録にまとめる
  3. 決算期を変更した旨の異動届を税務署等に提出する

これだけです。

ただし、決算期を変更できるのは法人(会社)だけです。個人事業は常に暦年を事業年度とするからです。

消費税でも決算期変更が有効なときがある

消費税では基準期間の課税売上高を基準として免税事業者と課税事業者に区分される場合があります。

  1. 免税事業者のうちに売却益を計上し、課税事業者になってから物件取得
  2. 課税事業者のうちに物件取得、免税事業者になってから物件売却

なんて工夫で消費税の節税ができる場合があります。

税金のことだけ考えてはいけません

節税を最優先に考えるのであれば、決算期変更が効果を発揮することはあります。

しかし、金融機関や仕入先などの取引先からの与信への影響も考慮する必要があります。
決算期変更を行うと稼動月数が少なくなりますから、損益計算書を並べただけで会社の業績評価をされると落ち込んだように見られてしまうことがあります。

多額の利益計上が予定されていて、決算日まで時間が少ないときは、決算期変更について顧問税理士の先生に相談してみるとよいかもしれません。

LED交換費用は全額損金処理できる

2012年5月17日 | 税金の基礎知識

国税庁が損金処理を認めた!

LEDの交換費用に関する取扱いが国税庁HPで公開されました。
これまで『1スイッチ当たりで判定する』という議論が各所でされてきましたが、事前照会で『全額損金算入できる』と説明がされました。

なんだよ!
今頃、言うな!!!!!

とも思いますが、これで取扱いがはっきりしたことになります。

国税庁のHPは以下のものです。

『自社の事務室の蛍光灯を蛍光灯型LEDランプに取り替えた場合の取替費用の取扱いについて』

蛍光灯を蛍光灯型LEDランプに取り替えることで、節電効果や使用可能期間などが向上している事実をもって、その有する固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増しているとして資本的支出に該当するのではないかとも考えられますが、蛍光灯(又は蛍光灯型LEDランプ)は、照明設備(建物附属設備)がその効用を発揮するための一つの部品であり、かつ、その部品の性能が高まったことをもって、建物附属設備として価値等が高まったとまではいえないと考えられますので、修繕費として処理することが相当です。

税務通信では、LEDランプそのものだけではなく、安定器の対価も損金算入できるとされています。ただし、『LEDを利用するために必要な作業であれば、(中略)修繕費に該当するといえるようです。』と若干消極的ではあります。

3月決算申告期限ギリギリでの見解の公表となりました。
国策としてLED普及促進を税制面でもサポートすべきだと以前から考えていました。
特別な税制を設けて対応するのかと思っていたところ、「一つの部品」というロジックで来るとは想像していませんでした。

いずれにしても、決算への折込が可能な会社は、是非ご検討いただきたいと思います。
上場会社は既に決算が確定しているはずなので、どうするんでしょうかね!?

複製画は経費処理できる

2012年5月16日 | 税金の基礎知識

なんでもかんでも非償却なわけではない

応接室などに飾る絵画などを非償却の資産として処理していませんか?
購入価額が高くても減価償却資産にできることがあります。

法人税基本通達 7-1-1
書画骨とう等
書画骨とう(複製のようなもので、単に装飾的目的にのみ使用されるものを除く。以下7-1-1において同じ。)のように、時の経過によりその価値が減少しない資産は減価償却資産に該当しないのであるが、次に掲げるようなものは原則として書画骨とうに該当する。
(1)古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値又は希少価値を有し、代替性のないもの
(2)美術関係の年鑑等に登載されている作者の制作に係る書画、彫刻、工芸品等
(注)書画骨とうに該当するかどうかが明らかでない美術品等でその取得価額が1点20万円(絵画にあっては、号ニ万円)未満であるものについては、減価償却資産として取り扱うことができるものとする。

要するに、

  1. 複製画はそもそもここでいう書画骨とう(非償却資産)にならない
  2. がん作であることがわかっている作品も書画骨とうにならない
  3. 取得時点で美術年間に名前が掲載されていない作者の作品は書画骨とうにならないことがある
  4. 20万円(絵画は号2万円)未満なら書画骨とうにはならない

絵画に関しては形式基準で判断

絵画は取得価額を号で割ってみて、2万円未満なら問答無用で書画骨とう(非償却資産)にならない訳です。

絵画の号は、ここで検索してみてください。

複製品や号2万円未満の絵画でも購入価額が20万円を超えていれば減価償却資産には該当することになります。一括で費用処理できませんけど、減価償却により費用化できますのでご注意ください。

なお、美術年鑑に掲載される価格というのも色々事情があるもののようです。
現役作家の評価が高くなっていることがあるとの指摘もありますから、納得いかない場合には美術品の専門家に相談してみてもよいかもしれません。相続時にいくらぐらいの評価になるのかという目安にもなるかもしれません。




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上原将人(上原公認会計士事務所) × 阿部淳也(1PAC. INC.)

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